【監査ネタ】電子帳簿保存法と会計監査について

2021年10月29日会計,監査会計士,監査,監査法人,電子帳簿保存法

裸の独立会計士です。

令和3年度税制改正において電子帳簿保存法が改正されています(2022年1月から適用)。
今回の電子帳簿保存法の改正に関しては、多くの企業に影響があるとともに会計監査上も影響がありそうです。

今回は電子帳簿保存法の改正を受けての監査への影響について解説できればと思います。
電子帳簿保存法の改正に関する解説は世にたくさんあると思うのでそのあたりは簡単にし、監査上どのような影響があるかについて重点的に触れたいと思います。

目次

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、帳簿や書類(決算関係書類や取引にかかる書類など)を電子データとして保存するための法律です。
帳簿は、総勘定元帳や仕訳帳など、書類でいえば損益計算書や貸借対照表といった決算関係書類、請求書、見積書、領収書といった取引にかかる書類などがあります。

現行の電子帳簿保存法では、電子帳簿や電子書類(最初から電子で作成・入手したもの=電子取引、紙をスキャンしたもの=スキャナ保存で取扱いが異なります)の保存を行う場合には、それぞれ要件があり、事前に税務当局からの承認を得る必要がありました。

上記のうち、特に紙で入手した書類をスキャナ保存する場合には、現行制度上は適切な内部統制が要求されています(適正事務処理要件-今回の改正で廃止)。
これは、書類が改ざんされることなく、適切にデータ化されるために必要とされているものです。

電子帳簿保存法の適用に関しては、ものによってハードルが高く、なかなか活用が進んでいない状況だったという理解です。

令和3年度税制改正による変更点

実務上影響が大きな変更点は以下の3点かと思います(それ以外にも、優良電子帳簿、罰則規定の厳格化など重要な改正点もありますが、ここでは割愛します)。

  • 事前の税務当局への申請・承認が不要となる。
  • スキャナ保存の要件緩和
  • 電子データで入手した書類の紙面保存の廃止(データでのみ保存可能)

このうちスキャナ保存の要件緩和については具体的に下記の点です。

  • スキャン期限の緩和
  • 訂正削除等の履歴を残すことでタイムスタンプ不要
  • 適正事務処理要件の廃止(相互牽制、定期検査等)

罰則が強化されたりしたものの、適用に当たっては要件が緩和されたものが多くなっています。
これによって、スキャナ保存の適用の拡大が見込まれる他、これまで電子データで入手した書類を紙面に打ち出して保存していた会社は、電子データの保存体制の構築が必要となります。

次の項目で詳しく触れますが、このスキャナ保存、電子データでの保存を行う領域が拡大するといった部分が監査上にも影響してきます。

蛇足ですが、消費税のインボイス制度との絡みで、電子インボイスは書面で保存も可能というのが、いまいちよくわかりませんね(収益認識基準といい消費税と法人税等の統一感のなさよ・・・)。

会計監査への影響

電子帳簿保存法の改正関係に関しては、2021年9月に日本公認会計士協会から以下が公表されています。

「令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しを受けた監査上の対応について(お知らせ)」

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20210930dig.html

メッセージとしては一言でいえば「スキャナ保存された文書について、監査証拠としての真正性に留意せよ。」ということでしょうか。
「真正性」とはざっくり言ってしまえば、「ホンモノですよね?改ざんされていないですよね?」みたいなイメージです。
新型コロナウィルスによるリモートワークの際にも注意喚起等あったかと思いますが、PDF化された文書は紙面に比べ改ざんしやすく、改ざんされていることに気づくことも(紙に比べて)難しいため、その真正性については注意が必要とされています。
以下、同様に公認会計士協会から公表されている『リモートワーク対応第3号「PDFに変換された証憑の真正性に関する監査上の留意事項」』となります。

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20210212ffj.html

例えばPDFで請求書等の証憑書類を閲覧して数字の確からしさを検証した場合に、ものによっては「その閲覧したPDF資料の真正性はどのように確認したの?」とかいうツッコミを食らうわけです。
結局重要な監査証拠は原本を見ましょう!なんて本末転倒といわれかねないことになっていた印象です。
(下記で少し触れますが、スキャナ保存に関する体制の評価などでカバーできる部分もあるのでしょうが・・・)

今回、特にスキャナ保存制度に関しては、適正事務処理要件が廃止されるなどの要件緩和があることから、このようなお知らせが公表されたものと思われます。

実務上は、特に重要な監査証拠(証憑書類)に関しては、監査人から(すべてではないにせよ)スキャンされたデータのみでなく、「原本を確認させてくれ」との要請が想定されます。
その際に電子帳簿保存法上、原本廃棄可能*1なので処分してしまいました!となると監査上別途補完的な対応が必要になる可能性があります(ちょっと、いや結構めんどくさいですね笑)。

また、上記お知らせにもある通り、監査上「スキャナ保存にかかる業務処理プロセス」についての検討が必要になるかと思います。
特にこれまではすべて紙面が正として取り扱ってきた会社でスキャナ保存制度等を活用する場合は、業務プロセスに「請求書等をスキャンして保存する」という作業が追加されることになると思います。また、電子データとして受領した書類に関しては、電子で保存することが必要なため、データの保存、管理に関する体制(ルール)の構築も必要かと思います。

監査的な目線で行くと、上記の通り、PDF化されたデータというのは改ざんも(紙面に比べれば)容易に行えるので、スキャンされたデータが改ざんされていないのかといった検討が必要になるかと思います。
これには、(紙面の場合もそうでしたが)提供されたPDFデータに不審な点*2がないか、スキャナ保存にかかる業務プロセスは適切に整備・運用されているか*3といった検討が求められることになると思われます。

*1 適正事務処理要件が廃止されたことにより、スキャン後(定期検査なしで)の原本の廃棄が可能になるため。
*2 例えば、数字の部分が斜めになっていて切り貼りした形跡があるといったことが考えられます。
*3 スキャナ保存にかかる内部統制が構築されているか、データの改ざんが防止される仕組みが構築されているかなど(適正事務処理要件とは別に監査上の目的で評価)。

まとめると以下の2点です。

  1. 原本廃棄可能でも監査上提出を要請される可能性がある
  2. スキャナ保存、電子データの保存に関する業務プロセス(内部統制)の検討が必要となる。

1.に関しては、いつまでスキャン後の書類を取っておけばいいか監査法人に相談しましょう。おそらく、年度監査が終わるくらいまで保存しておいてください・・・となるんですかね。

2.に関しては、監査を受けていなくとも不正等を防止する観点や、業務の効率化(スキャンする業務、書類を探す業務)の観点から、検討はしておくほうが良いかと思われます。

書籍など

電子帳簿保存法に関しては、国税庁のHP等と合わせて下記の書籍を利用してキャッチアップしました。

定価で税込1,650円ですが、現在(2021年10月末時点)、Amazonでは品薄になっているのか、少し高め(2,300円前後)になっていますね。
書店などでも取り扱いがあるでしょうし、最近出た書籍なのでおそらく近いうちに増刷がかかってAmazonでも定価で購入可能になるんじゃないですかね。
(専門書で古いものだと価格が高騰しているものもありますが・・・)

データ保存に利用するシステムのことなど、電子帳簿保存法は奥が深いですが、今回はこの辺りで。
また何か有益な情報があれば触れたいと思います。

2021年10月29日会計,監査会計士,監査,監査法人,電子帳簿保存法

Posted by 裸の独立会計士